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本研究について

多様な学術研究活動を育む

アカデミックデータ・イノベーション成熟度モデルの開発

概要

本研究では,大学における学術研究のライフサイクルに沿った研究データの蓄積・共有・公開および長期保管を通じて,研究者自らが研究データマネジメントスキル(以降,「RDM スキル」) を高められるとともに,研究データを軸とした研究コミュニティ形成や異分野連携を可能にするアカデミックデータ・イノベーション成熟度モデルを開発する.この成熟度モデルは,(1) 研究者であれば誰もが日常的に行う基本RDM スキル,(2) 分野ごとに特有のRDM スキル,(3) 分野横断型のイノベーションを創発するRDM スキル,の3 つのスキル及びこれらのスキル開発方法論により構成される.本研究では,文系から理系,基礎系から臨床系,実験室系からフィールド系,セキュアデータ管理系からオープンデータ推進系等,多様な分野の研究者が集う京都大学を実証フィールドとして成熟度モデルをグローバルスタンダードを取り入れながら開発することにより,他の大学等の研究機関にも横展開可能な標準的なものを開発することで,研究データマネジメントを通じてイノベーションの可能性に満ちた土壌を我が国の学術研究現場に育むことを目指す.

研究の学術的背景

研究データマネジメントは学術研究の根幹であり,研究者であれば研究分野に関係なく,仮説を立て,評価し,自らの主張を論文としてまとめる研究ライフサイクルを通じて誰もが常に行っている営みである.しかしながら,研究公正のための研究データの長期保管・検証(論文公開後の10年間)や,OECD・G8 での各国政府によるオープンサイエンス推進(国内は内閣府),国際潮流になりつつある研究助成機関によるデータマネジメント計画(Data Management Plan; DMP)の提示要求への国内への波及の可能性等,研究者を取り巻くコンテキストはここ数年で劇的に変化してきており,その結果,研究データマネジメントを研究の計画段階から実施段階,公開段階だけでなく,10 年にもわたる長期保管まで適切に対応することが求められるようになってきている.特に,急速に進む研究のデジタル化は,デジタルヒューマニティ等,これまでデジタル化に縁がなかった分野にも及び,研究環境のデジタル化に対する研究リテラシの強化が求められるようになっているものの,定常的な研究予算の激減に苦しむ蛸壺化した研究室では情報環境の急速な変化に対応できなくなってきている.このため,各大学は,研究者や研究グループに任せるのではなく,全学的観点から研究基盤の抜本的な見直しと再構築が必要になっている.例えば,欧米の大学では,米国国立科学財団・国立衛生研究所等の研究資金配分機関に研究費を申請する際,配分機関が求める研究データマネジメントに関する要件を満たす計画が容易に作成できるよう,各大学の支援環境が整備・強化されている.我が国でも,オープンサイエンスが内閣府主導で進められる中,競争的資金における研究データマネジメントに関する方針策定の必要性が議論されており(内閣府総合科学技術・イノベーション会議有識者議員との会合・平成30 年1 月25 日開催資料),近い将来,科研費等の競争的資金申請時にDMP の策定が求められ,すべての研究分野において研究データマネジメントに関する研究者の興味関心が急速に高まることが予想される.このような背景の下,京都大学では,理学研究科附属地磁気世界資料解析センター主催の「オープンサイエンスデータ推進ワークショップ」が2015 年度より6 回開催され,これを契機に,オープンサイエンスや研究公正のためのデータマネジメントに興味関心を持つ有志が集い,総長裁量経費や全学経費の支援を受けながら,京都大学おける研究データに関わる広範な議論や学内外連携が進み始めた.その成果として,我々は,研究データに係る状況をボトムアップでかつ全学的に調査研究するため,京都大学学際融合教育研究センターにアカデミックデータ・イノベーションユニット(通称「葛ユニット」.この名前には研究データマネジメントを通じて研究データを屑(クズ)としてゴミ箱に破棄するのではなく,葛(くず)まんじゅうのように見栄えも味も確かなものにしたいという想いを込めている)の設置が認められ,2017年11月から活動を開始した.葛ユニットでは,本学の研究者の研究活動によって生み出される多様なアカデミックデータを適切に蓄積・共有・公開および長期保管するデータマネジメント環境を調査研究し,多様な研究領域のアカデミックデータの融合による既存領域でのイノベーションの創出とデータを活用した新たな研究領域の創出を目指している(図1 参照).

アカデミックデータを適切に蓄積・共有・公開および長期保管するデータマネジメント環境
図1: アカデミックデータを適切に蓄積・共有・公開および長期保管するデータマネジメント環境
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